第4回 自分の強みを伝える-キャリア・コミュニケーション

マーケティングという言葉を聞いたら、たいていの方はまず「広告」を思い浮かべるのではないでしょうか。テレビ・コマーシャルや新聞・雑誌広告が代表的ですね。でもこういった広告は企業が伝えたいことを伝えているだけの「一方的なコミュニケーション」ですが、このような伝統的なマーケティングと異なる新しいマーケティングの考え方があります。

それは、‘ワン・ツー・ワンマーケティング’とも呼ばれる「双方向のマーケティング」です。この新しいマーケティングの本質はとってもシンプル。まずお客さんの求めているもの(ニーズ)が何かを聞いて、そのニーズに即した対応を行う、というものです。

さて本題です。これまで、キャリア・ドメインで自分のやりたい領域(業界)を決める。次に自分が得意なキャリア・ポジション(業務分野)を明確化する。その上で、あなたならではの知識・スキルを伸ばしていくことをお話してきました。そして、今回のテーマ、「キャリア・コミュニケーション」とは、こうやって伸ばした自分の強み・とんがりを上司や転職先などに効果的に伝えることです。実はこの場面においても、双方向マーケティングの考え方が重要なんです。

例えば、キャリア・コミュニケーションが求められる機会として、採用面接や人事考課のための上司との個人面談がありますね。その時、あなたは、自分の言いたいことをまくし立てるばかりの一人舞台を演じてはいないでしょうか?望ましいキャリア・コミュニケーションの第一歩は、転職先の企業がどんな知識・スキルを求めているか、あるいは上司が何を期待しているのか、きちんと質問して理解することです。その上で、今の自分の強みが彼らが求めていることに対応できるのか、あるいは将来的に対応可能となるのか、を伝えるのです。

なお、この点に関して、私自身の失敗談があります。まだ20代の頃の採用面接でのことです。自分のことを伝えることで頭が一杯になっていたら、面接官から「もっとこちらが何を求めているかを理解するよう心がけるべきだ」とはっきり言われたのです。私は、相手が求めている人材ニーズに応えることができるか、という点について、うまく伝えることができていなかったわけです。コミュニケーションの専門家であるマーケッターとしての採用面接での事でしたので、私はひどく落ち込んだものです。

そもそも、コミュニケーションとは、自分の言いたいことを言うというものではありません。自分の伝えたいことを受け入れ、納得してもらうことが目的です。そのためには、まずは相手の立場やニーズを理解することから始めるべきなのです。ここに、あなたが持つ固有の価値を認めてもらい、‘幸せなキャリア’を手に入れるコミュニケーションの鍵があります。

あらためて考えてみると、キャリア構築とはマーケティングそのものです。あなたと雇用主双方のニーズの相互交換であり、お互いのニーズがぴったりと合うのが理想なのです。

私の場合、職種がマーケッターということもあり、必然的に面接等におけるキャリア・コミュニケーションの重要性を認識せざるを得ませんでした。でも実は、相手の求めていることを知るために聞くことは、どんな職種のキャリアにとっても大切なことです。この視点はあなたの強みを的確に伝えることに必ず役立つはずです。