第5回 いかに情報を収集するか -キャリア・チャネル

マーケティングにおいて‘チャネル’とは、「流通経路」(販売経路)のことです。つまり、メーカーの立場で言えば、自社の製品をどのようなルートで販売するのか、ということになります。例えば、私たちがほぼ毎日購入する日用品のほとんどは、メーカー⇒卸⇒小売店⇒消費者のルートで販売されています。一方、製造直売、つまり、卸・小売を通さず、直接消費者に売るメーカーもあります。ただ、どのようなチャネルで販売するにせよ、チャネルの役割は、顧客にアプローチしたり、情報を収集することです。

さて、今回のテーマ、「キャリア・チャネル」は、どのようなルートで仕事・キャリアについての情報を集めるか、また新しい仕事に移るのか(あるいは、移らないのか)、についてお話します。

自分のやりたいドメイン(業界)、ポジション(業務分野)を決め、知識・スキルを磨き、そのスキルをきちんと相手に伝えることのできるコミュニケーション力(キャリア・コミュニケーション)を身に付けたら、最後に残っているのは、実際の職場探しです。これは、文字通り、キャリアを発揮する「場」ですね。この「働く場」との相性はとても大切です。やりがいを感じる充実した毎日を過ごし、幸せなキャリアを築くための土台が「職場」だからです。

では、幸せなキャリアを築くことのできる職場をどうやって探したらいいのでしょうか。私はかなりの回数、転職を重ねてきましたので、職探しのための情報収集もほとんどの方法を経験しました。新聞・求人誌の求人広告、インターネットの転職サイト、人材紹介会社への登録、ヘッドハンターからの紹介・・・。また、ベンチャー企業創立の新聞記事を見て直接、その会社社長にEメールで求人を打診したこともあります。

この豊富な(!)転職歴を振り返ってみると、仕事・キャリアの情報を集める方法には実にいろんなやり方があるもんだなあ、とあらためて思います。逆に、限られた情報源だと内容に偏りがある場合が多い、というのが実感ですね。マスコミに盛んに取り上げられる有名企業も、内情を聞くとメチャクチャであることも珍しくありませんでした。

ですから、自分のキャリア形成について役立つ情報や就職・転職先の企業についての情報を様々なチャネルを通じ、できるだけ多く入手することが必要だと思います。具体的には、求人広告の内容だけでなく、その会社についての新聞や専門誌の記事、その会社のことを知っている知人の話、できればその会社の社員に聞くなど様々な情報を集めましょう。

また、転職に当たって、人材紹介会社を利用された方はそれほど多くないと思いますが、彼らは、豊富な情報を提供してくれます。今は無名だがこれから大きく伸びる可能性を秘めた会社を紹介してくれることもあります。これは自分で求人広告を見ているだけで簡単にできることではありません。

ただ、人材紹介会社にお願いすれば楽に、簡単にいい職場を見つけてくれる、といった甘えの発想は止めましょう。結局のところ、いい職場探しは、自分自身のキャリアの魅力を高めること、転職先企業のニーズを理解した上で、自分の強みをどれだけきちんと伝えられるかにかかっているからです。

さて、今回は、私自身も体験した「転職」による適職探しを例にあげて、キャリア・仕事についての情報収集の大切さをお話しました。でも、いろんな情報を元によく考えた結果、実は現在の職場が自分に最も合っていた、ということもあるでしょう。「転職すること」と等しく「現在の職場でキャリアを作っていくこと」は立派な選択肢のひとつです。言ってみれば、転職をするしないは、チャネル選択における一つのオプションに過ぎないのです。

大事なことは、様々な情報を通じて、自分の知らない世界やいろんな可能性を知ることです。そして、自分自身の再発見に努めること。そうやって、自分自身をより理解できれば、自分が仕事に求めているものが何かも少しずつ見えてくる、ということです。ですから、「転職」自体を目的とするのではなく、幸せなキャリアを実現することを求めてください。