第8回 縦方向と横方向のキャリア

キャリア・マーケティングで大事なのは、小手先のテクニックではなく、心から叶えたいと思える「ビジョン」(夢)を持つこと。これは、私が今まで一番強調したかったことでした。でも、そんなビジョンを持つために「今、自分は何をやればいいの?」と聞き返したい方が多いと思います。

その答えは、今の自分がやっていること・できることを起点として、自分の可能性を広げるための行動を起こすことです。つまり、自分ができる領域を広げる努力をすることです。わかりやすく言えば、「スキルアップを図る」ということになります。スキルアップというと、夜間の英会話教室や、資格取得のための勉強などを連想されると思いますが、実は、今の自分の仕事こそ、最大のスキルアップの機会です。

さて、今の仕事を起点としたスキルアップの仕方には2つの方向があります。まず一つ目は「縦方向」のスキルアップと呼べるものです。例えば、一度、自分のやっている仕事を遠くから客観的に眺めてみてください。業務の進め方、同僚とのコミュニケーションの仕方、上司の使い方(!)など、たくさんの改善の余地があるのがわかるでしょう。そうやって見つけた改善点を実現するための行動を続けていると、あなたのスキルがどんどん磨かれていきます。

このように、現在の業務をテコにしてスキルアップを図るやり方は、井戸を縦に深く掘り下げるようなものだと思います。どんどん掘り下げていくと、あるところで豊富な地下水脈にぶちあたります。ここまで到達した人は、おそらくその業務の「達人」と呼ばれているでしょう。また、ここまでがんばった人は、その過程で「自分が本当にやりたいことが何か」がだんだん見えてくるようになります。やりたいことは、やってみて初めて見えてくるものなんですよ。

一方、「横方向」のスキルアップがあります。縦に深く掘ってみてある程度自分のやりたいこと、やりたくないことが見えてきたら、今度は井戸の穴を横に広げてみます。井戸の穴を横に広げるというのは、今の仕事に関連性のある周辺業務に取り組んでみることです。周辺業務の中で、まだ自分のできないことにチャレンジしていくことです。こうしてスキルを横に広げていくうちに、最初の仕事とはまるで違う仕事をやっているかも知れません。でも、つねに今の自分の持ち味・強みを起点としていれば、おそらく一貫性のあるキャリアパス(キャリアの道筋)になっていると思います。

考えてみると、私自身、マーケティングリサーチ業務の縦方向への深堀りを通じて、マーケティングの面白さに目覚めました。(学生時代はマーケティングには全く興味無し)、次に、リサーチに関連した分野である「広告」や「プロモーション」といった横方向へのスキルアップを図るために広告代理店へと移りました。現在は、 さらに穴を横方向に広げた結果として、マーケティングにとどまらない、ビジネス全体の立ち上げの仕事に関わらせていただくことも多くなりました。

こうした自分自身の経験からも実感するのは、結局のところ、毎日の業務を惰性でやるか、スキルアップの機会に転じるかは自分次第だという点です。

将来の夢を実現するためには、今の仕事を最大限に活かしたり、楽しめるような仕事に変えていくることが大切なのです。そのためには、受身で仕事をやるのではなく、主体的に仕事に取り組むこと、つまり仕事に振りまわされるのではなく、仕事をコントロールするのは自分だ、という気持ちが大事だと思います。

では、最後にこの言葉を読者の皆様にお贈りして、キャリア・マーケティングの連載の締めくくりとしたいと思います。